「クライアントが用意した画像を使っただけなのに——」制作会社・広告代理店の現場で、こんなケースが問題になることがあります。納品したPDFに埋め込まれた画像の著作権が第三者に帰属しており、制作会社も著作権侵害の共同責任者として問われるリスクです。
この記事では、PDF納品物に潜む著作権の地雷とその回避方法を、法的な根拠とともに解説します。
・PDFに埋め込まれた画像の著作権の所在
・「クライアント提供素材」が免責にならない理由
・制作会社が問われる3つの法的リスク
・共同責任のメカニズムと過去の事例傾向
・納品前に必ずやるべき著作権チェックフロー
1.PDFに埋め込まれた画像の著作権は誰のものか
PDFは複数の要素——テキスト・レイアウト・画像・フォント——が一つのファイルに統合されたフォーマットです。それぞれの要素に著作権が存在します。
埋め込まれた画像の著作権は、その画像を創作したカメラマン・デザイナー・イラストレーターに帰属します。クライアントが「うちで使っている素材」と渡してきた画像であっても、そのクライアント自身が著作権を持っていなければ、その画像の使用は無権限になります。
2.「クライアント提供素材」が免責にならない理由
制作会社がクライアントから素材を受け取り、PDFに組み込んで納品する——この流れで著作権侵害が発生した場合、制作会社も侵害の当事者とみなされる可能性があります。
著作権法上、著作権侵害は権利者の許諾なく著作物を利用した者が責任を負います。「クライアントに言われた」「クライアントが提供した素材を使った」という事実は、制作会社の責任を免除しません。利用行為を実行した者も責任の対象となります。
3.制作会社が問われる3つの法的リスク
リスク①:差止請求
著作権者は制作会社に対して、侵害物(納品PDF)の使用停止・廃棄を求めることができます(著作権法第112条)。すでに配布されたPDFの回収が必要になると、クライアントとの関係にも深刻な影響が生じます。
リスク②:損害賠償請求
著作権者から損害賠償を求められる場合、クライアントとともに制作会社も連帯責任を負う可能性があります。実際の損害額・使用料相当額・弁護士費用などが請求対象になります。
リスク③:クライアントとの賠償問題
制作会社が著作権侵害に加担したとしてクライアントから損害賠償を求められるケースもあります。「クライアントから提供された素材を使った」という主張が通らない場合、制作会社側が全額を負担することになりかねません。
4.納品前に必ずやるべき著作権チェックフロー
・① クライアント提供素材の出所・ライセンスを書面で確認する
・② 自社で使用するストック素材のライセンスが商用・印刷・PDF配布に対応しているか確認
・③ 使用フォントが埋め込み許可ライセンスを持つか確認
・④ 確認内容を記録し、クライアントの署名・承認を得る
・⑤ 契約書に「素材の権利保証はクライアントが行う」旨の条項を設ける
よくある質問(FAQ)
・A. あります。クライアントが著作権を持っていない素材を「使っていい」と提供した場合、制作会社も著作権侵害に問われる可能性があります。「クライアントから受け取ったから大丈夫」という主張は免責になりません。
・A. クライアントと制作会社の両方が責任を問われる可能性があります。最終的な責任の分担は契約内容・過失の程度によりますが、利用行為を実行した制作会社も当事者とみなされます。
・A. ①使用する全素材の出所・ライセンスをクライアントが書面で保証する条項を設ける、②第三者著作権侵害に関する損害はクライアントが負担する旨の条項を設ける、③制作会社側でも可能な範囲で素材の適法性を確認するプロセスを持つ——この3点が基本対策です。

