「写真ACで探せば、無料で何でも使えるよね」「いらすとやのイラストなら著作権関係ないでしょ」——そう思って業務に使い続けている担当者は、少なくないと思います。
しかし、こんな場面が実際に起きています。パンフレットにいらすとやのイラストを30点以上使用していた組織が、規約違反を指摘された。Unsplashの写真を広告に使ったところ、写真に写っていた人物から肖像権に基づく申し立てを受けた。Canva無料プランで制作したバナーに有料素材が含まれていたことが後から発覚した——。

「フリー素材」の「フリー」には、「無料(Free of charge)」と「自由に使える(Free to use)」という2つの意味があります。この2つが混同されているために、「無料で入手した=自由に使える」という誤解が生まれます。
実際には、無料で使えるが商用利用は制限されているもの・改変はNGのもの・使用点数に上限があるものなど、サービスによって条件はバラバラです。「知らなかった」では済まない事態を防ぐために、この記事では日本で最もよく使われる4つのサービス(写真AC・いらすとや・Unsplash・Canva)の利用条件を徹底的に整理します。
・「フリー素材」の「フリー」が意味すること——2つの意味の違い
・写真AC:商用利用OKだが避けるべきNG用途と人物写真の注意点
・いらすとや:知られていない「20点ルール」の詳細
・Unsplash:著作権フリーでも「被写体の権利」は別途確認が必要な理由
・Canva:プランによって大きく変わる素材の利用範囲
・組織として素材利用を管理するための実務的な仕組み

1.「フリー素材」の「フリー」を正確に理解する
まず、混乱の根源にある「フリー」の意味を整理します。
・①無料(Free of charge):費用なしに入手・使用できる
・②自由(Free to use):使用条件が少なく、自由度が高い
「無料」と「自由」は必ずしもセットではありません。たとえば「無料だが商用利用は有料プランのみ」「無料だが改変はNG」というサービスは多数あります。
また、著作権の観点では「著作権フリー」と「著作権が存在しない」も混同されがちです。「著作権フリー」という言葉は「権利者が使用を自由に認めている」という意味であり、著作権そのものが消滅しているわけではありません。

そのとおりです。ダウンロードが無料であることと、商用利用が許可されていることは別問題です。「無料で手に入れた」と「自由に使える」は、同じ意味ではありません。この違いを常に意識することが、フリー素材トラブルを防ぐ第一歩です。
2.写真AC——商用利用OKだが、見落とされる制限がある
写真ACは国内最大級のフリー素材サービスです。自治体・企業・個人問わず広く利用されており、豊富な日本語コンテンツが強みです。
(1)無料会員と有料会員の違い
・無料会員:1日のダウンロード数に上限あり(現在は1日5点)
・無料会員:ダウンロードのたびにCAPTCHA認証が必要
・有料会員(定額制):ダウンロード数制限なし・CAPTCHA不要
・共通:動画素材(動画ACより)は有料プランのみ
無料会員でも商用利用は基本的に可能ですが、ダウンロード上限に引っかかる場合は業務効率が落ちます。大量に使う組織には有料プランが現実的です。
(2)商用利用OKだが、これだけはNG
写真ACの素材は商用利用が可能ですが、利用規約には明確なNG用途が定められています。
・素材そのままを商品・コンテンツとして販売・配布する(壁紙アプリ・素材集等)
・NFTとしての販売・出品
・特定の人物・企業・商品を誹謗中傷する目的での使用
・アダルトコンテンツへの使用
・AIの学習データとしての使用(明示的に禁止)
「素材そのままを販売する」という点は比較的知られていますが、AIの学習データへの使用が明示的に禁止されている点は見落とされがちです。AI開発・学習に関わる業務で使用する場合は特に注意が必要です。
(3)人物写真の商用利用に潜む「肖像権」の問題
写真ACの人物写真には、撮影に同意したモデルが写っています。しかし、モデルリリース(肖像権の使用許諾)の範囲は無制限ではなく、特定の文脈での利用が問題になる場合があります。

それは問題になります。モデルリリースは「写真の著作権上の商業利用」を許諾するものですが、「特定人物が特定の商品・サービスを推薦しているように見える表現」は、写真の著作権とは別に不正競争防止法や景品表示法の問題が生じます。人物写真を広告に使う際は、「写真の利用条件」と「表現内容の適切さ」を別々に確認してください。
3.いらすとや——「商用無料」の落とし穴は「20点ルール」

日本で最も有名なフリーイラストサービス「いらすとや」。かわいらしいタッチのイラストは、自治体の広報・社内資料・Webサイトなど、あらゆる場面で使われています。しかし、多くの担当者が知らない重要な制限が存在します。
(1)商用利用はOK、ただし使用点数に上限がある
・商用利用:可(無料)
・クレジット表記:不要
・改変・加工:可(改変素材を素材集として再配布するのはNG)
・【重要】1つの制作物につき20点以内のみ使用可
・21点以上使う場合は有料ライセンスの取得が必要
「1つの制作物につき20点まで」というルールが、最も見落とされている制限です。パンフレット1冊・プレゼン資料1本・Webページ1ページなどの「制作物の単位」に対して、最大20点という制限があります。

厳密には利用規約違反になります。ただし、商用利用ライセンスを取得することで追加使用が可能になります。既存の資料については、ライセンスを遡及取得するか、20点以内に絞り込む対応が必要です。
なお「1つの制作物」の解釈が曖昧な場合があります。シリーズもの・定期刊行物など、複数回に分けて発行するコンテンツが「1制作物」に当たるかどうかは、いらすとやに直接問い合わせて確認することを推奨します。
(2)その他のNG用途
・いらすとやの素材のみを集めたコンテンツ(素材集・スタンプ等)の販売
・NFTとしての販売・出品
・AIの学習データとしての使用(禁止)
・素材を大量に使用したAIモデルのトレーニング
4.Unsplash——著作権フリーでも「被写体の権利」は別問題
高品質な写真を無料で使えるサービスとして、英語圏を中心に世界中のデザイナー・コンテンツ制作者に使われているUnsplash。「商用利用可・クレジット不要」というシンプルなライセンスが人気の理由です。
しかし、Unsplashの「ライセンス」がカバーするのは「写真家(著作者)の著作権」のみです。写真に写り込む人物・建物・ロゴ等の権利は、別途確認が必要です。
(1)Unsplashライセンスの基本
・商用・非商用問わず使用可
・改変・加工可
・クレジット表記:不要(推奨はされる)
・Unsplashの写真を集めた別の素材サービスとして販売・配布:NG
・Unsplashから直接ダウンロードして販売・再配布:NG
(2)著作権以外に確認が必要な「被写体の権利」
・肖像権:写真に映る人物が商業利用に同意しているかどうか(モデルリリースの有無)
・建築著作権:著名建築物や美術館所蔵作品が写り込む場合
・商標権:特定企業のロゴ・製品が写り込む場合
・プライバシー権:個人が特定できる形で撮影されている場合

「著作権の問題はない」が、「肖像権の問題が残る可能性がある」というのが正確な答えです。Unsplashの写真の多くはモデルリリースなしで提供されています。人物の顔が明確に写る写真を、広告・製品・会社サイトのメインビジュアルに使う場合は特にリスクが高くなります。
Unsplashでは各写真のページに「モデルリリースあり」のバッジが表示されているものがあります。人物写真を商業目的のメインビジュアルに使う場合は、このバッジを確認するか、または有料ストックフォト(Shutterstock・Adobe Stock等)で「モデルリリース済み」フィルターを使うのがより安全です。
(3)AIで加工したUnsplash画像の扱い
Unsplashの画像をAIで加工(背景除去・スタイル変換等)して使用する場合、Unsplashのライセンスは加工した成果物にも適用されます。ただし、加工によって肖像権の問題が解消されるわけではない点に注意が必要です。
5.Canva——プランによって天と地ほど違う素材の利用範囲
グラフィックデザインを誰でも簡単に作れるCanvaは、自治体・中小企業・個人事業主まで幅広く使われています。Canvaのデザインに使われる素材には、Canva自身が提供するものとユーザーがアップロードしたものがありますが、ここではCanva提供素材に絞って解説します。
(1)無料プランと有料プランの素材利用の違い
・無料プラン(Canva Free):「無料」マークの素材のみ使用可。「プレミアム」マークの素材は使用不可
・Canva Pro:すべての素材(プレミアム含む)を商用利用可
・Canva for Teams:Proと同等。複数人での利用管理機能あり
・教育・非営利向けプラン:条件付きで一部Pro素材が利用可能

はい、可能です。ただし注意点があります。無料プランで作成したデザインにプレミアム素材が含まれていた場合、そのデザインをダウンロード・公開するには有料プランへのアップグレードが必要になります。「無料でデザインを作って確認し、公開前にProに加入する」というフローは問題ありませんが、「無料プランのままプレミアム素材入りのデザインをダウンロードして使用した」という状態は規約違反です。
(2)Canva素材のNG用途
・素材そのものをスタンドアロンで販売・配布する(デザインの一部としての使用はOK)
・素材をデザインテンプレートとして別サービスで販売する
・NFTとしての販売
・商標・ロゴとして登録する目的で使用する(Canvaのデザインそのものを商標登録できない)
(3)Canva AI素材(Magic Media・Dream Lab)の注意点
Canva ProのAI機能で生成した素材は有料プランで商用利用可能です。ただし、AI生成素材であっても、既存の著作物に類似した内容を生成して使用することは問題になりえます。Canvaのライセンスが「ツール利用上の問題をカバーする」ものであっても、生成物の内容による著作権侵害・商標権侵害は別問題だからです。
6.4サービス比較と、組織としての素材管理の仕組み
(1)4サービス 商用利用ポイント早見表
・写真AC:商用OK(無料会員は1日5点制限)/改変OK/人物写真は肖像権別途確認
・いらすとや:商用OK(1制作物20点まで)/改変OK/21点以上は有料ライセンス必要
・Unsplash:著作権フリー・商用OK/改変OK/被写体の権利(肖像権等)は別途確認
・Canva無料:無料素材のみ商用OK/Proプランで全素材OK
(2)組織として素材利用を管理するための仕組み
個人の知識に依存するだけでは、組織全体でのリスクを管理できません。以下のような仕組みを整備することが重要です。
・①使用可能なサービスのリストと各サービスの利用条件を社内Wiki等に整理する
・②使用した素材の出所・ライセンス条件を記録に残す(スプレッドシート等)
・③人物写真・著名建築物等を使う場合の確認フローを決める
・④利用規約は変更されるため、年に1回以上の定期確認を担当者に割り当てる
・⑤「よくわからない場合は使わない」というルールを徹底する
素材の種類・量が増えてくると、スプレッドシートだけでの管理に限界が生じます。
7.よくある質問(FAQ)
Q. いらすとやを商品パッケージに使えますか?
A. 商用利用自体は可能ですが、1種類の商品パッケージで20点以内という制限が適用されます。また、いらすとやのイラストを「商品のメインデザイン」として使用する場合、いらすとや側の審査・確認が必要な場合があります。大量生産する商品パッケージへの使用は事前に問い合わせてください。
Q. 写真ACの無料素材をブログのサムネイルに使えますか?
A. 商用ブログへの使用は基本的に可能です。ただし、無料会員は1日5点のダウンロード制限があること、また人物写真を広告的に使用する場合は肖像権の確認が必要なことに注意してください。
Q. Unsplashの画像にクレジット表記は必要ですか?
A. Unsplashのライセンス上、クレジット表記は「必須ではない」とされています。ただし、クレジット表記することで撮影者へのリスペクトを示すことができ、コミュニティへの貢献にもなります。表記する場合は「Photo by 〇〇 on Unsplash」の形式が推奨されています。
Q. Canva無料プランで作ったバナーをSNS広告に使えますか?
A. 使用した素材がすべて「無料」マークのものであれば、商用SNS広告への使用も可能です。ただし「プレミアム」マークの素材が1点でも含まれていると、利用規約違反になります。デザインのエクスポート時に確認メッセージが表示されることがありますが、それを無視して使用しないよう注意してください。
Q. フリー素材を使ったデザインを納品した後に、規約違反が発覚したらどうなりますか?
A. 発覚した時点で使用を停止し、権利者(サービス提供者または素材の著作者)に状況を説明する必要があります。損害賠償を求められる可能性もあります。制作を受託している場合、クライアントへの説明と対応が必要になります。このようなリスクを避けるためにも、使用前の確認と使用記録の保持が重要です。
8.まとめ——「フリー」を正しく理解して、組織で安全に使う
・①「フリー素材」の「フリー」は「無料」と「自由」の混同に注意。両方の確認が必要
・②写真AC:商用OK・日5点制限・人物写真の表現内容は別途確認が必要
・③いらすとや:商用OK・1制作物20点まで。21点以上は有料ライセンス必須
・④Unsplash:著作権フリーでも肖像権・商標権・建築著作権は別途確認が必要
・⑤Canva:プランによって素材の利用範囲が大きく異なる。無料プランでプレミアム素材の使用はNG
「フリー素材なら安心」という前提は、今すぐ改める必要があります。各サービスの利用規約は変更されることもあるため、「以前確認したからOK」ではなく、定期的な確認を習慣にすることが組織としての重要な姿勢です。
素材利用のトラブルは、「知識の有無」で9割防げます。この記事が、その第一歩になれば幸いです。
この記事は2026年5月時点の情報に基づいています。各サービスの利用規約は変更される場合があります。最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
よくある質問(FAQ)
・A. 「商用利用OK」にも条件があります。例えば「20点ルール(いらすとや)」「アダルトコンテンツ不可(写真AC)」「被写体モデルの肖像権(Unsplash)」など、各サービスに固有の制限があります。必ず利用規約を個別に確認してください。
・A. プランによって異なります。有料プランのProコンテンツは商用利用可能ですが、一部の素材は追加ライセンスが必要です。無料プランの素材には商用利用不可のものが含まれます。使用前に各素材のライセンスを確認することが必須です。
・A. いらすとやには「1つのサイト・印刷物に20点まで」という利用規制があります(商用・非商用問わず)。20点を超えて使用する場合は別途許諾が必要です。また同一イラストを複数箇所で使う場合のカウント方法も確認が必要です。


