「この写真、どこから持ってきたんでしたっけ?」——年度末の引き継ぎシーズンになると、多くの自治体広報担当者がこんな疑問を抱えます。共有フォルダには前任者が集めた数百枚の画像が眠り、出所も利用条件も記録はどこにも残っていません。
著作権侵害の多くは悪意からではなく、「前任者から引き継いだ」「長年使っていた」という惰性から生まれます。この記事では、自治体特有の「引き継ぎ著作権リスク」の構造と、今すぐ取れる対策を解説します。
・自治体の引き継ぎで著作権情報が失われるメカニズム
・共有フォルダに潜む3つのリスクパターン
・著作権侵害発覚時の自治体の法的責任
・引き継ぎ時の著作権チェックリスト5項目
・属人管理から組織管理へ移行するためのアプローチ
1.「誰が集めた画像かわからない」が侵害を生む構造
自治体の広報・情報系部署では、2〜3年ごとの人事異動が一般的です。担当者が変わるたびに、デジタルコンテンツの著作権情報は口頭かメモ書きで引き継がれるか、そもそも引き継がれないまま放置されます。
問題は、画像ファイルそのものは共有フォルダに残り続けるという点です。ファイルに著作権情報は内包されていないため、次のような侵害が誰も気づかないうちに積み重なります。
- 有料素材サービスの契約を解約した後も、同じ画像を使い続ける
- 1年限定ライセンスの画像を3年後に再利用する
- フリーランスのカメラマンに依頼した写真を無断で二次利用する
2.共有フォルダに潜む3つのリスクパターン
パターン①:ライセンス期限切れ素材の使い回し
写真素材サービスには「1年間有効」「5ダウンロードまで」など、利用期限や回数に制限があるものが少なくありません。担当者が個人アカウントで購入した素材が、退職・異動後も共有フォルダに残り続け、後任者が素性を知らないまま使用するケースがあります。
パターン②:業者納品物の権利帰属が不明
委託した制作会社から納品されたバナーやチラシには、第三者素材が埋め込まれていることがあります。制作会社がライセンスを取得していても、それが自治体側に移転しているかどうかは契約次第です。「納品された素材だから大丈夫」という思い込みが、引き継ぎ後のリスクを高めます。
パターン③:出所不明のインターネット収集画像
かつて、Google画像検索や各種サイトから画像をダウンロードして資料に使う慣行が一部で存在しました。そうした画像が今も共有フォルダに残っているとしたら、現在の担当者が侵害リスクを負うことになります。
3.著作権侵害が発覚した場合の自治体の責任
自治体も著作権法の適用対象です。「行政機関だから」「公共目的だから」という理由で著作権が免除されることはありません。
侵害が発覚した場合、著作権法第112条に基づく差止請求・損害賠償請求を受ける可能性があります。さらに行政機関が著作権侵害を起こしたという事実は、住民からの信頼失墜に直結します。「知らなかった」は免責事由になりません。侵害の事実があれば故意・過失を問わず民事責任が生じます。
4.引き継ぎ時に必ずやるべき著作権チェック5項目
・① 共有フォルダ内の画像・動画・音楽ファイルの出所を一覧化する
・② 有料素材サービスのアカウント・ライセンス情報を書面で引き継ぐ
・③ 外部業者からの納品物に含まれる素材の権利帰属を契約書で確認する
・④ 出所不明のファイルは使用を停止し、適切な素材に差し替える
・⑤ 著作権情報の記録フォーマットを標準化し、組織として管理する
5.「属人管理」から「組織管理」へ
引き継ぎ著作権リスクの根本原因は、著作権情報が「人の頭の中」にしか存在しないことです。担当者が変わった瞬間、その情報は失われます。
解決策は属人管理から組織管理への移行です。使用中の素材の出所・ライセンス情報を組織として記録し、新任担当者でも即座に状況を把握できる仕組みを整えること——それが引き継ぎ著作権リスクの根本的な解決につながります。とりわけ大量のデジタルコンテンツを扱う組織では、手作業管理には限界があり、仕組みとしての整備が不可欠です。
よくある質問(FAQ)
・A. あります。「フリー」と表記されていても、商用利用不可・クレジット必須・改変不可などの条件が付いていたり、サイト自体が無断転載している場合があります。必ず一次配布元のライセンスを確認してください。
・A. 現在使用している担当者・組織が責任を負います。著作権法は「知らなかった」を免責事由としていないため、侵害の事実があれば現担当者が権利者から請求を受ける可能性があります。
・A. 最低限、①素材の出所(サービス名・URL)、②ライセンス種別(商用可否・改変可否等)、③取得日・有効期限、④使用媒体・箇所を記録しておくと、引き継ぎや後の確認がしやすくなります。


