📖 このテーマの全体像は 素材の商用利用 完全ガイド でまとめています。
いらすとやの素材は、1つの制作物につき20点まで、商用でも無料で使えます。クレジット表記も不要です。ただし「21点以上の商用利用は有償」「素材メインの商品化は禁止」など、見落とされがちな条件がいくつもあります。
いらすとやは自治体の広報紙から企業の社内資料、テレビ番組まで、あらゆる場面で使われる定番素材集です。「みんな使っているから大丈夫」という感覚で点数を数えずに使い、後から規約違反に気づくケースは珍しくありません。
この記事では、いらすとやの利用規約を著作権の視点から整理し、無料で使える範囲、有償になる条件、禁止事項、自治体・企業実務での注意点まで解説します。
・無料で使える範囲——「1制作物20点まで」ルールの数え方
・有償対応になる4つのケース
・禁止事項——商品化・再配布・イメージを損なう利用
・「著作権フリー」ではない——法的な仕組みの理解
・自治体・企業で使うときの実務チェックポイント

1.いらすとやの利用規約——無料で使える範囲
いらすとやの素材は、公式サイトの「ご利用について」に定められた条件の範囲内で、商用・非商用を問わず無料で利用できます。運営者はイラストレーターのみふねたかし氏で、公開されている素材は数万点にのぼります。
無料利用の主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 商用利用 | 可(1つの制作物につき素材20点まで無料) |
| クレジット表記 | 不要 |
| 事前連絡 | 不要 |
| 加工 | 常識の範囲内で可(トリミング・文字入れ・色変更など) |
| 21点以上の商用利用 | 有償対応(要問い合わせ) |
| 素材の再配布・販売 | 禁止 |
ポイントは、この気前のよい条件が「規約を守っている限り」の話だという点です。いらすとやは著作権を放棄していません。規約の範囲を超えた利用は、無断利用=著作権侵害(複製権・公衆送信権の侵害)として扱われます。フリー素材一般に共通するこの構造は「“フリー”の落とし穴——写真AC・いらすとや・Unsplash・Canvaの「商用OK」の範囲」で比較しています。
2.「1つの制作物につき20点まで」の数え方
結論から言うと、チラシ1枚・動画1本・Webサイト1つなど、ひとまとまりの成果物ごとに20点までと数えるのが基本です。この「20点ルール」はいらすとや規約の中で最も誤解が多い部分です。
制作物ごとのカウント例
| 制作物 | 数え方の目安 |
|---|---|
| チラシ・ポスター | 1枚ごとに20点まで |
| パンフレット・広報紙 | 1冊(1号)ごとに20点まで |
| Webサイト | 1サイトごとに20点まで |
| 動画 | 1本ごとに20点まで |
| プレゼン資料 | 1ファイルごとに20点まで |
同じ素材を1つの制作物の中で繰り返し使う場合の数え方(1点と数えるか、使用回数分と数えるか)は、規約の文言だけでは判断が分かれます。またWebサイトのようにページを追加し続ける媒体では「1つの制作物」の境界が曖昧になりがちです。20点近く使う予定があるなら、公式の問い合わせ窓口で確認しておくのが確実です。
21点以上使いたい場合
素材を21点以上使った商用デザインは有償対応となります。公式サイト経由で見積もりを依頼する流れです。「あと数点だけオーバーする」場合でも、無断で使えば規約違反です。有償化を避けたいなら、制作物を分ける・他のフリー素材と組み合わせるといった構成の工夫で20点以内に収めます。他サイトとの併用を考えるなら「Pexels・Pixabayを日本の商用で使うときの注意点」も参考になります。
3.やってはいけない利用——禁止事項の整理
いらすとやの規約では、点数に関係なく禁止される利用類型が定められています。企業・自治体の実務で特に事故が起きやすいのは次の4つです。
⚠️ 点数に関係なくNGとなる利用例
- 素材が主な内容となる商品化——イラストをそのままTシャツ・スタンプ・ステッカー等にして販売する
- 素材の再配布・販売——素材集としてまとめ直して配布する、自作素材と偽って提供する
- イメージを損なう利用——公序良俗に反するコンテンツ、作者や題材の名誉を傷つける文脈での使用
- ロゴ・商標としての利用——イラストを組織や商品のロゴマークとして登録・独占使用する
「商品化」の線引きには注意が必要です。イラストが商品の主内容になる場合(イラスト自体を売る形)はNGですが、店頭POPや商品説明での利用のように付随的な使い方は通常の利用の範囲です。判断に迷うケースは自己判断せず、公式に問い合わせてください。
4.「著作権フリー」ではない——法的な仕組み
いらすとやは著作権フリーではありません。著作権はみふねたかし氏が保有したまま、利用規約という形で利用を許諾(ライセンス)している構造です(著作権法第63条・利用の許諾)。
この構造には実務上の帰結が2つあります。
第一に、規約の範囲を超えた利用は契約違反であると同時に著作権侵害になります。無断複製は複製権(第21条)、Web掲載は公衆送信権(第23条)の侵害です。「無料素材だから侵害にならない」ということはありません。
第二に、規約は将来変更される可能性があります。利用時点の規約を確認し、大量に使う制作物では利用日と規約内容を記録しておくと、後から説明できます。素材利用の記録管理については「SNS投稿前の著作権確認、誰がどう「記録」していますか?」で詳しく解説しています。
人物・キャラクターが写る素材との違い
いらすとやのイラストは作者の創作物なので、写真素材と違って肖像権・パブリシティ権の処理は基本的に不要です。ただし実在の人物をモデルにしたイラスト(有名人の似顔絵風素材など)を広告に使う場合は、本人のパブリシティ権に配慮が必要になる場面があります。人物にまつわる権利は「パブリシティ権とは?肖像権との違い・判例・AI時代の論点」で整理しています。
5.場面別Q&A——この使い方はOKか
実際の問い合わせで多い場面を、規約に沿って判定します。共通の判断手順は「①点数を数える→②商用性を確認→③禁止類型に当たらないか確認」の3ステップです。
| 場面 | 判定 | ポイント |
|---|---|---|
| 会社のSNS投稿にイラストを添える | ◯ | 投稿1件を1制作物として20点以内なら可。アカウント全体で通算する必要はないと解されるが、1投稿に大量使用は避ける |
| YouTube動画の解説イラストに使う | ◯(条件付き) | 動画1本20点以内。収益化チャンネルは商用にあたるため、21点以上は有償 |
| 社内研修資料・営業プレゼンに使う | ◯ | 1ファイル20点以内。社内利用でも事業活動なので、点数管理はしておく |
| 店舗の看板・のぼりに使う | ◯(条件付き) | 制作物ごとに20点以内。イラストが主役の看板でも広告目的なら通常利用の範囲 |
| LINEスタンプにして販売する | ✕ | 素材が主な内容となる商品化にあたり禁止 |
| イラストを自社アプリの素材集として同梱・配布 | ✕ | 再配布にあたり禁止 |
| 選挙・政治活動のチラシに使う | △ | 規約上の明文禁止はないが、団体・作者のイメージを損なう利用は禁止。批判・攻撃的な文脈は避ける |
判定に迷う場面の多くは「商品化」と「通常利用」の境界です。目安として、イラストを外したら商品・制作物が成立しなくなるなら商品化寄り、イラストが説明・装飾の役割にとどまるなら通常利用寄りと考えると整理できます。それでも迷えば公式に問い合わせる——この順番を社内で共有しておくと、担当者ごとの判断ブレを防げます。
6.自治体・企業で使うときの実務チェックポイント
組織でいらすとやを使うときの最大のリスクは、個人の判断がバラバラなまま「なんとなく」使われ続けることです。広報紙は総務課、SNSは各課、動画は外注——と担当が分かれると、誰も点数を数えていない状態になります。
チェックリスト
・1つの制作物あたりの使用点数を数えているか(20点以内か)
・広告収入のある媒体・有償頒布物で使っていないか(商用扱いの検討)
・素材メインのグッズ化・ノベルティ化をしていないか
・外注先(制作会社)に点数ルールを伝えているか
・利用規約の確認日と利用箇所を記録しているか
外注制作物は要注意
制作会社にチラシや動画を発注すると、納品物にいらすとや素材が使われていることがあります。この場合も規約を守る責任は利用者側にも及びます。発注時に「使用素材とライセンスの一覧を納品物に含める」ことを仕様に入れておくと、点数超過や規約違反を防げます。外注時の権利関係全般は「外注したデザインの著作権は誰にある?」をご覧ください。
自治体広報は「商用」か
自治体の広報紙・Webサイトが規約上の「商用」にあたるかは、規約に明文の定義がなく断定できません。無償配布の広報紙は非商用的な性格が強い一方、広告枠を販売している広報紙や有償頒布物は商用と判断される余地があります。実務上の安全策はシンプルで、媒体の性格を問わず1制作物20点以内に収めることです。20点以内なら商用・非商用の判定に踏み込む必要がそもそもありません。
7.まとめ
いらすとやは「商用でも無料・クレジット不要」という利用しやすい素材集ですが、無料の条件は1つの制作物につき20点までです。21点以上の商用利用は有償、素材メインの商品化・再配布は点数に関係なく禁止。そして著作権フリーではなく、規約違反は著作権侵害に直結します。組織で使うなら、点数のカウントと利用記録をルール化してください。それだけで、いらすとや利用のリスクはほぼ消えます。
よくある質問(FAQ)
・A. 1つの制作物につき素材20点までなら商用でも無料です。21点以上を使った商用デザインは有償対応になります。クレジット表記は不要です。
・A. チラシ1枚・動画1本・Webサイト1つなど、ひとまとまりの成果物ごとに数えるのが基本です。判断に迷う場合は公式への問い合わせが安全です。
・A. 常識の範囲内での加工(トリミング・文字入れ・色変更など)は認められています。イメージを損なう改変や、加工物の素材としての再配布は禁止です。
・A. 素材が主な内容となる商品化は禁止です。Tシャツ・スタンプ・ステッカーなどイラスト自体を売る形はNGです。
・A. 自治体広報が「商用」かは規約上明確ではありませんが、実務では媒体の性格を問わず20点以内に収める運用が安全です。
・A. いいえ。著作権は作者が保有したまま、規約の条件内で無料利用を許諾している形です。規約を超えた利用は著作権侵害になります。
・A. 非商用の利用は点数の心配なく使えるのが基本です。ただし有償頒布物・バザー商品など商用性を帯びる場面では20点ルールと商品化禁止の確認が必要です。
・A. 個人のアイコン利用は認められる範囲ですが、自作を装う利用や、企業のロゴ的な独占使用はできません。




